「引抜き耐力」「浮き上がり」という言葉を目にしても、それが自分の建物にどう関係するのか、鋼管杭工法でどう対策されているのかが分かりにくいという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、引抜き耐力が重要になる理由と、鋼管杭工法における対策の仕組み、性能を確認する方法までを解説します。
建物の基礎に用いる杭には、建物の重さを支える「支持力(鉛直方向に押し込まれる力への抵抗力)」に加えて、地中から引き抜こうとする力に抵抗する「引抜き耐力」も求められます。地震時の水平力や、地下水位が高い土地での浮力など、建物を持ち上げようとする力に対して、杭がどれだけ踏みとどまれるかを示す指標です。
引抜き耐力が不足していると、地震などの際に杭が地中から抜け上がり、建物の傾斜や損壊につながるおそれがあります。特に細長い建物や軽量な建物では、建物の重さに対して引抜き力の影響が相対的に大きくなるため、設計段階での確認が欠かせません。
浮き上がり・引抜きが問題になりやすいのは、主に以下のようなケースです。
これらの現象は、いずれも地盤自体が液体に近い状態になったり、水分を多く含んだりすることで発生します。液状化のメカニズムそのものについては、以下のページで詳しく解説しています。
鋼管杭工法が引抜き力に対応できるのは、主に以下のような構造上の工夫によるものです。
杭の先端に翼(拡底翼)を設けている工法では、翼が地中で周辺の土をとらえることで、引き抜こうとする力に抵抗します。翼の形状・大きさによって、発揮できる引抜き抵抗力は工法ごとに異なります。
杭の側面と土との間に生じる摩擦力(周面摩擦)も、引抜き耐力の一部を構成します。杭の長さや土質によって、この摩擦力の大きさは変わります。
また、鋼管杭工法には、コンクリート系の工法と比較して高い靭性(粘り強さ)があるという特性もあります。地震時の変形にしなやかに追従できる点は、引抜き力への対応においても有利に働きます。鋼管杭工法全体の特徴は、以下のページでも解説しています。
工法ごとの引抜き耐力は、具体的な数値としては現場条件(土質・杭径・杭長など)によって変わるため、一律に比較することはできません。ただし、工法自体の引抜き性能が第三者機関によって証明されているかどうかは、客観的な確認ポイントの一つになります。
一般財団法人日本建築総合試験所(GBRC)は、国土交通大臣認定の取得に必要な性能評価等を行う機関であり※、引抜き方向の性能証明を行う制度も設けています。施工会社に、こうした第三者証明の有無を確認してみるとよいでしょう。国土交通大臣認定についても、以下のページで確認方法を解説しています。
引抜き耐力・浮き上がり対策は、具体的な数値だけでなく、工法の構造上の仕組みと第三者証明の有無を合わせて確認することが、信頼できる工法選びにつながります。
鋼管杭工法の支持力や施工性は、工法によって大きく異なります。杭径や無排土対応の有無が、密集地での近隣沈下リスクや残土処分費の差に直結するため、工法選びが現場コストの分岐点です。
当メディアでは、建物規模・現場条件が異なる3工法を比較。自社の案件条件に合う工法を見つける参考にしてください。
鋼管杭と一口に言っても、戸建ての狭小地と超高荷重の大型施設とでは、求められる性能が全く異なります。ここでは、「建物の規模」と「立地条件」にフォーカスし、現場の課題をクリアするおすすめの工法を3つ厳選しました。
| 杭径レンジ | φ101.1〜457.2mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 2,521kN(φ457.2mm) |
最大HU590の高強度鋼を採用※、鋳物一体成型の翼で溶接部の破断リスクを防ぎ大翼化。大翼の高い支持力で杭径を最大2サイズダウンでき、重機制約に縛られず密集地でも施工が可能です。
大きな翼の高い引抜き抵抗力により、浅い支持層でも十分な支持力を確保。深くまで杭を打ち込む必要がなく、回転貫入による無排土施工のため、近隣地盤への影響を抑えられます。
| 杭径レンジ | φ89.1〜165.2mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 約217kN(φ165.2mm) |
φ89.1mmからの細径5サイズ展開で、戸建て等の地盤条件に合った杭を選定可能。先端支持・摩擦支持を地盤により使い分けることで、必要以上に杭を深くせず、杭長・コストを抑えます。
セメント不使用の回転貫入方式のため、将来の解体時には逆回転で撤去でき、産廃のない更地に復元可能。
施工も2t建柱車1台で完結し、狭い前面道路の現場にも対応します。
| 杭径レンジ | φ600〜1,200mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 17,900kN(φ1,200mm) |
掘削液を使わない中掘り工法で、φ1,400mmの大口径鋼管杭を深度70mまで施工可能。支持層が深く他工法では届かない敷地でも、大型施設の重荷重を支える基礎を構築できます。
杭先端に最大φ2,400mmの根固め球根を築造し、先端支持力17,900kNを確保。高靭性鋼管が大地震時にも粘り強く変形するため、審査の厳しい重要施設のBCP要件にも対応します。