回転貫入鋼管杭工法

目次

回転貫入鋼管杭工法とは、先端に翼を取り付けた鋼管杭を回転させながら地中に貫入し、支持層に定着させる既製杭工法のひとつです。低振動・低騒音かつ小型重機での施工が可能な点から、密集地・狭小地を中心に採用されています。

本ページでは、回転貫入鋼管杭工法の特徴・メリット・注意点を解説すると共に、代表的な3工法の概要をご紹介します。現場条件に合った工法選定の参考としてお役立てください。

回転貫入鋼管杭工法の特徴

回転貫入鋼管杭工法は、杭先端に溶接または鋳物一体成型した翼を持つ鋼管を、回転力と押し込み力を同時に加えることで地盤に貫入する工法です。施工中に排土が発生しないのが特徴で、残土処分やそれに伴う費用が不要です。

施工後は逆回転による引き抜き撤去が可能であり、将来の土地利用の転換や建て替えを見据えた選択肢として注目されています。

回転貫入鋼管杭工法の
3つのメリット

この工法が都市部の現場で多く選ばれている背景には、現場制約の多い条件下でも施工を成立させる実用的な優位性があるためです。以下では、回転貫入鋼管杭工法の3点のメリットについて、詳しく解説します。

無排土施工で残土処分費を
ゼロに抑えられる

回転貫入鋼管杭工法のメリットのひとつが、無排土施工による残土処分費の削減です。杭を回転させながら地中に貫入するため、その他の工法と違って大量の残土・汚泥が発生しません。

都心部では、産業廃棄物として処理が必要な残土の運搬・処分コストが高騰しており、トータルコストへの影響が無視できない状況となっています。そのため、残土処分費をゼロにできるこの工法は予算超過リスクを抑える有効な手段と言えるでしょう。

低振動・低騒音施工で
密集地・住宅密集地でも
施工可能

回転貫入鋼管杭工法は、杭を「打ち込む」のではなく「回転させて貫入する」ため、近隣建物への振動や騒音が抑えられる工法です。隣家との距離が近い住宅密集地では、施工中の振動クレームが工期遅延や損害賠償につながるケースもあるため、低振動・低騒音という特性はそのリスクを事前に回避できる点でも優れています。

また、病院・学校・商業施設など、振動・騒音規制が厳しいエリアに隣接する現場でも、採用候補となるでしょう。

小型重機1台で
狭小地・旗竿地への
搬入・施工を実現

大型重機が入れない現場では、選択できる工法に制限が生じます。

回転貫入鋼管杭工法は杭径のラインナップが豊富であり、細径を選択することで小型施工機での施工も可能です。そのため、前面道路が狭い旗竿地、隣地との間隔が狭い密集市街地といった現場でも、小型重機が1台あれば搬入・施工できるケースがあります。

回転貫入鋼管杭工法を
選択する際の注意点

この工法はメリットが多い一方で、現場条件や管理体制によっては注意が必要な点もあります。採用前に以下の4点を確認しておきましょう。

  • 鋼材価格は市況によって変動しやすく、セメント系地盤改良と比べて初期の材料コストが高めになる傾向がある。
  • 途中に硬い岩盤や厚い玉石層がある場合、先端翼が損傷したり支持層まで貫入できないリスクがあり、事前の地盤調査が不可欠。
  • 支持層が深い場合は現場で杭を継ぎ合わせる必要があり、溶接品質にばらつきが出ないよう徹底した管理が必要。
  • 地中での腐食リスクに備え、建物の耐用年数に合わせた腐食しろ(肉厚の割増し)をあらかじめ設計に組み込む必要がある。

上記の注意点は工法全体に共通するものです。ボーリング調査やSWS試験で支持層の深度・地質を事前に確認し、工法の適合性を判断したうえで採用を検討してください。個別工法ごとの施工可能範囲や対応地盤の詳細については、各工法ページでご確認ください。

各工法の詳細を確認して現場
条件に合った選択を実現する

回転貫入鋼管杭工法には、先端翼の形状・材質・杭径ラインナップなどが異なる複数の工法が存在します。以下に代表的な3工法を紹介しますので、現場規模・地盤条件・コスト要件などを踏まえ、最適な工法をご検討ください。

礎オメガ工法|
鋳物一体成型テーパー翼で
最大2サイズダウンを実現

礎オメガ工法
引用元:報国エンジニアリング公式サイト
https://www.hokoku-eng.jp/ground-improvement.html

報国エンジニアリングが提供する礎オメガ工法は、先端翼を鋳物で一体成型したテーパー形状が特徴です。杭の本数・基礎サイズを変えずに杭径をダウンサイズでき、VE提案でコストダウンを図りたいケースで有効な工法です。

EAZET工法|
細径5サイズ展開で
戸建てから中規模建築まで
柔軟に対応

スクリューパイル CK-®EAZET
引用元:千代田工営公式サイト
https://www.chiyodakouei.com/business_a.html#bussa_ttl01

千代田工営が施工するEAZET工法は、創業以来回転貫入工法を専門に扱ってきた同社の主力工法です。幅広い杭径ラインナップで戸建て住宅から中規模建築物まで対応できる工法です。

G-ECSパイル|
シンプル構造で経済性と
幅広い施工条件への
適応力を両立

G-ECSパイル工法
引用元:丸五基礎工業公式サイト
https://www.marugokiso.co.jp/method/method_09.html

G-ECSパイルは、丸五基礎工業が施工を担う回転貫入鋼管杭工法です。シンプルな先端翼構造により製品コストを抑えつつ、幅広い地盤条件に対応できます。経済性を重視する案件での採用に適した工法です。

CHECK
回転貫入鋼管杭工法なら
難条件の現場施工に
対応可能

回転貫入鋼管杭工法は、無排土施工、低振動・低騒音、小型重機対応という3つのメリットにより、密集地・狭小地・制約条件の多い現場で特に威力を発揮する工法です。

VE提案の根拠としても活用しやすく、設計変更を最小限に抑えながらコストダウンを実現できることから、設計者・施工管理者にとって提案しやすい工法と言えます。

鋼管杭工法の支持力や施工性は、工法によって大きく異なります。杭径や無排土対応の有無が、密集地での近隣沈下リスクや残土処分費の差に直結するため、工法選びが現場コストの分岐点です。

当メディアでは、建物規模・現場条件が異なる3工法を比較。自社の案件条件に合う工法を見つける参考にしてください。

【現場別】おすすめの
鋼管杭工法3選

鋼管杭と一口に言っても、戸建ての狭小地と超高荷重の大型施設とでは、求められる性能が全く異なります。ここでは、「建物の規模」と「立地条件」にフォーカスし、現場の課題をクリアするおすすめの工法を3つ厳選しました。

既存建物に囲まれた
マンション・ビル
礎オメガ工法
報国エンジニアリング
報国エンジニアリング
杭径レンジ φ101.1〜457.2mm
最大支持力 2,521kN(φ457.2mm)
大翼で支持力を確保し、
杭径を最大2サイズダウン

最大HU590の高強度鋼を採用、鋳物一体成型の翼で溶接部の破断リスクを防ぎ大翼化。大翼の高い支持力で杭径を最大2サイズダウンでき、重機制約に縛られず密集地でも施工が可能です。

浅い根入れ長で、
引抜き性能評価を満たす

大きな翼の高い引抜き抵抗力により、浅い支持層でも十分な支持力を確保。深くまで杭を打ち込む必要がなく、回転貫入による無排土施工のため、近隣地盤への影響を抑えられます

前面道路が狭い戸建・アパート
PPG工法
トラバース
トラバース
杭径レンジ φ89.1〜165.2mm
最大支持力 約217kN(φ165.2mm)
住宅特化の細径杭で
過剰設計を回避

φ89.1mmからの細径5サイズ展開で、戸建て等の地盤条件に合った杭を選定可能。先端支持・摩擦支持を地盤により使い分けることで、必要以上に杭を深くせず、杭長・コストを抑えます

2t建柱車1台で完結、
撤去も容易で資産価値担保

セメント不使用の回転貫入方式のため、将来の解体時には逆回転で撤去でき、産廃のない更地に復元可能
施工も2t建柱車1台で完結し、狭い前面道路の現場にも対応します。

支持層が深い
重荷重の大型施設
TN-X工法
テノックス
テノックス
杭径レンジ φ600〜1,200mm
最大支持力 17,900kN(φ1,200mm)
深度70mまで到達し、
支持層が深い敷地に対応

掘削液を使わない中掘り工法で、φ1,400mmの大口径鋼管杭を深度70mまで施工可能。支持層が深く他工法では届かない敷地でも、大型施設の重荷重を支える基礎を構築できます。

大口径根固めで重荷重と
BCP要件に対応

杭先端に最大φ2,400mmの根固め球根を築造し、先端支持力17,900kNを確保。高靭性鋼管が大地震時にも粘り強く変形するため、審査の厳しい重要施設のBCP要件にも対応します。

※HU590、STK490、STK490より適切な鋼材材質を選定