鋼管杭は鉄でできているため、「錆びて弱くなってしまうのではないか」「実際何年くらいもつのか」といった不安を持つ方も少なくないでしょう。
本記事では、鋼管杭工法の耐用年数に対する考え方と、腐食が進む仕組み、設計段階で行われている腐食対策について解説します。
鋼管杭工法の耐用年数について、「◯年」という単一の断定的な数値を示すことは適切ではありません。腐食の進み方は、土質・地下水位・塩分濃度などの地盤環境によって大きく異なるためです。そのため、鋼管杭の耐久性は、「何年もつか」という単純な問いではなく、「どの程度の腐食を見込んで設計しているか」という考え方で捉えることが実務上は一般的です。
鋼管杭の腐食は、土中の水分や成分と鋼材が反応することで進行します。腐食の速度は年数の経過とともに緩やかになる傾向があるとされ、公的な研究機関の資料でも、経過年数のデータに基づいた腐食量の推定式が示されています。
例えば、国立研究開発法人土木研究所が公開している技術資料※1では、守屋らによる2005年の調査(経過年数26年までの実測データに基づく回帰式)を引用し、鋼管杭等を対象とした場合、100年後の腐食量は片面あたり平均約1mm程度と推定されると紹介されています。これは実測に基づく確定値ではなく、経年データから将来を推定した値であり、地盤条件や調査対象によって結果は変動する点に注意が必要です。
鋼管杭の設計では、あらかじめ腐食による減厚を見込んだ「腐食代」を、必要な強度に上乗せして杭の厚みを決める考え方が一般的です。
例えば、土木分野の設計指針の一例として、通常の環境下(海水や工業廃水の影響を受けない場合)で、常時水中・土中にある部分に片側2mm程度の腐食減厚を考慮するという基準が示されています※2。これは道路橋の下部構造を対象とした指針であり、建築分野の鋼管杭に同じ数値がそのまま適用されるとは限りませんが、「腐食代を見込んで杭の厚みを設計する」という考え方の一例として参考になります。
腐食代を確保する設計に加え、鋼管杭工法の中には、杭材の仕様や施工方法によって腐食への対応力を持たせている工法もあります。工法ごとの対応内容は施工会社に確認するとよいでしょう。
海岸沿いの埋立地など、塩分を多く含む地盤では、通常の環境よりも腐食が進みやすくなる可能性があるとされています。こうした立地では、地盤調査の段階で土質・地下水の状況を確認し、必要に応じて腐食代を厚めに見込む、防食処理を追加するなどの対応が検討されます。埋立地における鋼管杭工法の注意点は、以下のページでも解説しています。
鋼管杭工法全体のメリット・デメリットについては、以下のページもあわせてご確認ください。
鋼管杭工法の耐久性は、単一の年数で語れるものではなく、地盤環境に応じた腐食代の設計と、必要に応じた防食対策の有無で判断することが大切です。気になる立地条件がある場合は、地盤調査の結果をもとに施工会社へ具体的な対応を確認しましょう。
鋼管杭工法の支持力や施工性は、工法によって大きく異なります。杭径や無排土対応の有無が、密集地での近隣沈下リスクや残土処分費の差に直結するため、工法選びが現場コストの分岐点です。
当メディアでは、建物規模・現場条件が異なる3工法を比較。自社の案件条件に合う工法を見つける参考にしてください。
鋼管杭と一口に言っても、戸建ての狭小地と超高荷重の大型施設とでは、求められる性能が全く異なります。ここでは、「建物の規模」と「立地条件」にフォーカスし、現場の課題をクリアするおすすめの工法を3つ厳選しました。
| 杭径レンジ | φ101.1〜457.2mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 2,521kN(φ457.2mm) |
最大HU590の高強度鋼を採用※、鋳物一体成型の翼で溶接部の破断リスクを防ぎ大翼化。大翼の高い支持力で杭径を最大2サイズダウンでき、重機制約に縛られず密集地でも施工が可能です。
大きな翼の高い引抜き抵抗力により、浅い支持層でも十分な支持力を確保。深くまで杭を打ち込む必要がなく、回転貫入による無排土施工のため、近隣地盤への影響を抑えられます。
| 杭径レンジ | φ89.1〜165.2mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 約217kN(φ165.2mm) |
φ89.1mmからの細径5サイズ展開で、戸建て等の地盤条件に合った杭を選定可能。先端支持・摩擦支持を地盤により使い分けることで、必要以上に杭を深くせず、杭長・コストを抑えます。
セメント不使用の回転貫入方式のため、将来の解体時には逆回転で撤去でき、産廃のない更地に復元可能。
施工も2t建柱車1台で完結し、狭い前面道路の現場にも対応します。
| 杭径レンジ | φ600〜1,200mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 17,900kN(φ1,200mm) |
掘削液を使わない中掘り工法で、φ1,400mmの大口径鋼管杭を深度70mまで施工可能。支持層が深く他工法では届かない敷地でも、大型施設の重荷重を支える基礎を構築できます。
杭先端に最大φ2,400mmの根固め球根を築造し、先端支持力17,900kNを確保。高靭性鋼管が大地震時にも粘り強く変形するため、審査の厳しい重要施設のBCP要件にも対応します。