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鋼管杭工法のメリット・デメリット

目次

建築物の基礎工事では、どの地盤補強工法を選ぶかによって安全性や工期、トータルコストが大きく左右されます。都市部の狭小地から大型建築物まで幅広く採用される鋼管杭工法ですが、メリットだけでなくデメリットや制約条件も存在するため、これらを正確に把握したうえで採用を判断しましょう。

本記事では、鋼管杭工法の仕組みを解説し、メリット・デメリットについて整理していきます。

鋼管杭工法とは?

まず、鋼管杭工法の基本的な仕組みや適用範囲を確認しておきましょう。特に適用範囲については地盤条件との適合確認が求められるため、事前に把握しておくことが大切です。

鋼管杭工法の仕組み

鋼管杭工法は、鋼製の管(鋼管)を地中深くの支持層まで打ち込み、建物の荷重を直接伝えることで沈下を防ぐ基礎工法です。杭の先端が支持層にしっかりと届くため、地表の土質に関係なく安定した支持力を確保できます。

施工方式には、先端に翼を付けた鋼管を回転させつつ貫入する「回転貫入工法」や、鋼管の内側を掘りながら杭を沈めていく「中掘り工法」などがあります。

主な適用建築物と地盤条件

鋼管杭工法は、木造戸建て住宅から中高層マンション・物流倉庫まで幅広い規模の建物に対応可能です。

採用できる地盤条件としては、確実に杭先端が到達できる支持層の存在が前提となります。目安は砂質土でN値30以上、粘性土でN値20以上とされており、中間層に玉石や岩盤が混在する場合は貫入が困難になるケースもあるため、事前のボーリング調査が欠かせません。

鋼管杭工法のメリット

鋼管杭工法には、地震への耐性や無排土施工による残土処分費の削減、狭小地への対応、工期の短縮や将来的な撤去の容易さなど、さまざまなメリットがあります。ここでは、それぞれについて詳しく解説します。

①地震に強い高靭性と
高い支持力

鋼管杭に使われる鋼材は、コンクリートと比べて靭性(粘り強さ)が高く、地震時の水平力や引抜き力に対して強いという特性があります。コンクリートは曲げに対して脆く割れやすい一方で、鋼管杭は変形しながらエネルギーを吸収できるため、地震後も安全性を確保しやすいのが特徴です。

さらに、先端に拡底翼(羽根)を設けることで、杭の太さ以上の支持力を発揮できる点も大きな強みとなります。

②無排土施工で
残土処分費をゼロにできる

回転貫入工法では、杭を回転させながら地中に押し込むため、土を掘り出す工程が発生しません。セメント系柱状改良のように汚泥が大量に出たりしないため、残土処分費を丸ごとカットできます。

また、セメント系改良では地盤中の特定成分と反応して六価クロムなどの有害物質が発生するリスクがありますが、鋼管杭工法はセメントを使用しないため、土壌汚染の心配もありません。

③小型重機による
狭小地・密集地への対応力

回転貫入式の鋼管杭工法では、杭径に応じた重機を選択できます。細径の工法であれば小型の重機1台で対応できるため、前面道路が狭い旗竿地や隣地境界が迫る密集地でも搬入・施工できるケースがあります。

また、打撃による衝撃振動が発生せず、低騒音・低振動で施工できる点も強みです。近隣建物への振動クレームや騒音トラブルを事前に防ぎやすく、都市部の現場でも採用しやすい工法です。

④養生期間が不要で
工期を短縮できる

セメント系改良などでは、施工後にセメントが所定の強度に達するまでの「養生期間」が必要です。これにより、一般的に数日から1週間程度は次の工程に進めず、工期に直接影響します。

一方、鋼管杭工法は杭を貫入した時点で所定の支持力を発揮するため、養生待ちの時間がかかりません。施工後すぐに次の工程へ移行できるため、工期が厳しい現場では大きな強みとなるでしょう。

⑤将来の撤去が容易で
土地の資産価値を守れる

セメント系柱状改良では、地中にコンクリートの塊が残るため将来の建て替えや売却時に土地の評価に影響するリスクがあります。また、残存物の撤去に多大なコストがかかるのも課題点です。

一方、回転貫入式の鋼管杭は逆方向に回転させることで容易に引き抜き撤去が可能です。そのため、「地中に杭が残ると資産価値が下がるのでは」といった施主の不安にも対応しやすいでしょう。

鋼管杭工法のデメリット

多くのメリットを持つ鋼管杭工法ですが、採用できない制約条件やデメリットなども存在します。ここでは、押さえておきたい4つのデメリットについて解説しますので、工法選定の際にお役立てください。

①鋼材価格の変動による
コストへの影響

鋼管杭の材料である鉄(鋼材)の価格は、市況の変動が反映されやすいため注意が必要です。セメント系地盤改良と比較すると初期の材料コストは高めになる傾向があり、鋼材価格が高騰している時期には他工法との価格差が生まれるケースがあります。

ただし、残土処分費がかからない点や工期短縮によるトータルコストで考えると、鋼管杭工法が有利になる場合も少なくありません。費用相場の詳細については以下のページで詳しく解説しています。

②硬質地盤(岩盤・玉石
など)への対応不可リスク

支持層に届く前の中間層に硬い岩盤や玉石層が混在している場合、先端翼の損傷などによって所定の深度まで貫入できないリスクがあります。貫入障害が発生すると、追加の地盤調査や工法変更が必要になり、工期・コストの両面に影響が出ます。

こうしたリスクを回避するには、施工前にボーリング調査を実施し、中間層の構成や支持層の深度を正確に把握しておくことが大切です。

③大深度施工における
継手の品質管理が必要

支持層が深い現場では、1本の杭長では足りず、鋼管を現場で溶接(継手)しながら施工します。

この作業は作業員の技能に依存する部分が大きく、雨天・強風時には溶接品質が低下するリスクもあるため、現場溶接が必要となる案件では溶接資格保有者の配置など、適切な管理体制が可能な施工会社に相談する必要があるでしょう。

④腐食(サビ)に対する
考慮が不可欠

鋼管杭は鉄製であるため、地中環境によっては腐食(サビ)のリスクがあります。とくに塩分を含む地盤では、腐食の進行が進みやすくなる可能性があるため注意が必要です。

こうした腐食に対しては、設計上で建物の耐用年数に合わせた「腐食しろ(板厚の割増し)」をあらかじめ組み込むことで対処します。地盤調査結果をもとに、施工会社と連携して適切な仕様を決めておきましょう。

鋼管杭工法と他の工法との違い

ここでは、現場でよく比較されるセメント系地盤改良・場所打ちコンクリート杭・既製コンクリート杭の3工法と鋼管杭工法との違いを解説します。それぞれアプローチや特性が異なるため、現場条件に合わせて適切に選択しましょう。

鋼管杭工法とセメント系
地盤改良との違い

セメント系地盤改良は、軟弱地盤にセメント系固化材を混ぜて土を固める工法です。一方、鋼管杭工法は硬い支持層まで杭を届かせる工法であり、根本的なアプローチが異なります。

セメントの強度は土質や配合に左右されるため品質にばらつきが生じやすく、撤去も困難です。鋼管杭は支持層に定着するため強度が安定しており、逆回転による撤去にも対応できます。

比較項目鋼管杭工法(回転貫入)セメント系地盤改良
支持アプローチ支持層まで杭を貫入・定着軟弱地盤を固化材で固める
強度の安定性高い(支持層定着による)地盤・配合条件に依存
残土の有無無排土(残土・汚泥なし)汚泥が発生
撤去のしやすさ逆回転で引き抜き可能困難
土壌汚染リスクなし六価クロムなどの発生リスクあり

鋼管杭工法と液状化の関係については以下のページで詳しく解説しています。

鋼管杭工法と場所打ち
コンクリート杭との違い

場所打ちコンクリート杭は、現場で地中に穴を掘り、そこにコンクリートを流し込んで杭を作る工法です。現場で杭を築造するため大口径・大深度に対応でき、超高層ビルや大型施設の基礎として広く採用されています。

ただし、掘削には大型機械やプラント設備が必要となり、大量の残土も発生します。また、狭小地では搬入が難しいケースも少なくありません。

一方、施工時に残土が出ず、コンパクトな重機を用いる鋼管杭工法は、現場制約の多い都市部でも採用しやすい点で優位と言えるでしょう。

比較項目鋼管杭工法(回転貫入)場所打ちコンクリート杭
重機サイズ小~中型(狭小地対応可)大型機械・プラント設備が必要
残土の有無無排土大量の残土が発生
養生期間不要数日~1週間以上必要
撤去のしやすさ逆回転で引き抜き可能困難

鋼管杭工法と既製
コンクリート杭との違い

工場で製造したPHC杭などの既製コンクリート杭を用いた工法は、大量生産によるコストの安定性が強みです。ただし、1本あたりの重量が大きく打設の際に大型クレーンが必要なため、搬入路が限られる現場では採用できないことがあります。

また、コンクリートは曲げに対して脆い特性があり、地震時の靭性(粘り強さ)では鋼管杭の方が優勢です。そのため、引抜き力が課題となるペンシルビルなどでは、鋼管杭が選ばれるケースも多々あります。

比較項目鋼管杭工法(回転貫入)既製コンクリート杭(PHC杭等)
材料の靭性高い低い
重機サイズ小~中型で対応可大型クレーンが必要
残土の有無無排土工法によっては残土が発生
引抜き耐力高い比較的低い
撤去のしやすさ逆回転で引き抜き可能困難
CHECK
現場の条件に合わせた
選択が重要

鋼管杭工法は靭性の高さや無排土施工、狭小地対応など多くのメリットがある一方、鋼材価格の変動や貫入障害リスクといったデメリットもあり、現場条件に合わせた工法選定が欠かせません。

残土を出したくない場合や、大型重機が入れないといった現場制約が重なるほど、鋼管杭工法の優位性は高まります。コスト・環境・規模などを考慮して、適切な工法を選択するようにしましょう。

鋼管杭工法の支持力や施工性は、工法によって大きく異なります。杭径や無排土対応の有無が、密集地での近隣沈下リスクや残土処分費の差に直結するため、工法選びが現場コストの分岐点です。

当メディアでは、建物規模・現場条件が異なる3工法を比較。自社の案件条件に合う工法を見つける参考にしてください。

【現場別】おすすめの
鋼管杭工法3選

鋼管杭と一口に言っても、戸建ての狭小地と超高荷重の大型施設とでは、求められる性能が全く異なります。ここでは、「建物の規模」と「立地条件」にフォーカスし、現場の課題をクリアするおすすめの工法を3つ厳選しました。

既存建物に囲まれた
マンション・ビル
礎オメガ工法
報国エンジニアリング
報国エンジニアリング
杭径レンジ φ101.1〜457.2mm
最大支持力 2,521kN(φ457.2mm)
大翼で支持力を確保し、
杭径を最大2サイズダウン

最大HU590の高強度鋼を採用、鋳物一体成型の翼で溶接部の破断リスクを防ぎ大翼化。大翼の高い支持力で杭径を最大2サイズダウンでき、重機制約に縛られず密集地でも施工が可能です。

浅い根入れ長で、
引抜き性能評価を満たす

大きな翼の高い引抜き抵抗力により、浅い支持層でも十分な支持力を確保。深くまで杭を打ち込む必要がなく、回転貫入による無排土施工のため、近隣地盤への影響を抑えられます

前面道路が狭い戸建・アパート
PPG工法
トラバース
トラバース
杭径レンジ φ89.1〜165.2mm
最大支持力 約217kN(φ165.2mm)
住宅特化の細径杭で
過剰設計を回避

φ89.1mmからの細径5サイズ展開で、戸建て等の地盤条件に合った杭を選定可能。先端支持・摩擦支持を地盤により使い分けることで、必要以上に杭を深くせず、杭長・コストを抑えます

2t建柱車1台で完結、
撤去も容易で資産価値担保

セメント不使用の回転貫入方式のため、将来の解体時には逆回転で撤去でき、産廃のない更地に復元可能
施工も2t建柱車1台で完結し、狭い前面道路の現場にも対応します。

支持層が深い
重荷重の大型施設
TN-X工法
テノックス
テノックス
杭径レンジ φ600〜1,200mm
最大支持力 17,900kN(φ1,200mm)
深度70mまで到達し、
支持層が深い敷地に対応

掘削液を使わない中掘り工法で、φ1,400mmの大口径鋼管杭を深度70mまで施工可能。支持層が深く他工法では届かない敷地でも、大型施設の重荷重を支える基礎を構築できます。

大口径根固めで重荷重と
BCP要件に対応

杭先端に最大φ2,400mmの根固め球根を築造し、先端支持力17,900kNを確保。高靭性鋼管が大地震時にも粘り強く変形するため、審査の厳しい重要施設のBCP要件にも対応します。

※HU590、STK490、STK490より適切な鋼材材質を選定