施工会社から「杭径を1サイズ下げられます」「杭本数を減らせます」といった提案を受けたとき、その理屈が分からなければ、コストは下がっても安全性が保たれるのか判断に迷うのではないでしょうか。
本記事では、鋼管杭工法の杭径・杭本数がどのような要素で決まるのか、杭径を小さくする提案が可能になる条件、提案を受けた際に確認すべきポイントを解説します。
鋼管杭工法は、地中の支持層まで杭を到達させ、建物の荷重を伝える基礎工法です。杭径・杭本数は、建物の荷重に対して必要な支持力を確保できるよう、地盤調査の結果に基づいて設計されます。
地盤調査では、支持層としてどの程度の硬さがあるかを確認します。支持層の目安として、砂質土でN値30以上、粘性土でN値20以上という数値が業界で目安として使われることがありますが※、これは公的な基準値ではなく、あくまで目安である点に注意が必要です。実際に必要な支持層の深さ・硬さは、個別の地盤調査結果と構造計算によって判断されます。
鋼管杭工法の多くは、先端に翼(拡底翼)を設けることで、杭そのものの太さ以上の支持力を発揮できるよう設計されています。翼の形状・大きさによって発揮できる支持力が異なるため、同じ建物荷重・地盤条件でも、工法によって選定される杭径が変わることがあります。翼の構造とメリットの詳細は、以下のページで解説しています。
先端翼の形状や使用する鋼材の強度によっては、同等以上の支持力を保ちながら、杭径を小さくする提案が可能になる場合があります。これは、VE(バリューエンジニアリング)提案の一つとして、施工会社から示されることがあります。
ただし、このような提案がどの現場でも成立するわけではありません。岩盤・玉石層・転石が混在する地盤では、そもそも杭の貫入自体が難しくなる場合があり、地盤条件によってサイズダウンの余地が変わります。提案を受けた際は、自社の地盤調査結果に基づいて成立する提案かどうかを確認することが欠かせません。
杭径や本数が小さく・少なくなれば、それに応じて杭が載る基礎コンクリートや鉄筋の量も減るため、材料費・工事費が抑えられる場合があります。地盤条件や設計条件によって効果の程度は異なりますが、杭径・本数の決め方が、基礎工事全体のコストに直結する要素の一つであることは理解しておく価値があります。費用面の詳しい考え方は、以下のページで解説しています。
施工会社から杭径・杭本数の見直し提案を受けた際は、以下の点を確認しましょう。
見直し後の杭径・本数でも、建物荷重に対して必要な支持力が確保されているかを、構造計算書のうえで確認しましょう。
杭径や本数の変更が、確認申請の手続きにどう影響するかは、変更内容や所管の確認申請窓口の判断によって異なります。「確認申請が不要になる」といった説明を受けた場合も、個別の案件で施工会社・確認申請窓口に確認することをおすすめします。
提案されている杭径・本数が、実際の地盤調査結果(支持層の深さ・地質)と整合しているかを確認しましょう。地盤条件によっては、サイズダウンの提案が適用できない場合もあります。
杭径・杭本数は、地盤調査の結果と構造計算に基づいて決まるものです。サイズダウン提案を受けた際は、地盤条件との整合性や構造計算での裏付けを確認したうえで、コストと安全性のバランスを判断することが大切です。
鋼管杭工法の支持力や施工性は、工法によって大きく異なります。杭径や無排土対応の有無が、密集地での近隣沈下リスクや残土処分費の差に直結するため、工法選びが現場コストの分岐点です。
当メディアでは、建物規模・現場条件が異なる3工法を比較。自社の案件条件に合う工法を見つける参考にしてください。
鋼管杭と一口に言っても、戸建ての狭小地と超高荷重の大型施設とでは、求められる性能が全く異なります。ここでは、「建物の規模」と「立地条件」にフォーカスし、現場の課題をクリアするおすすめの工法を3つ厳選しました。
| 杭径レンジ | φ101.1〜457.2mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 2,521kN(φ457.2mm) |
最大HU590の高強度鋼を採用※、鋳物一体成型の翼で溶接部の破断リスクを防ぎ大翼化。大翼の高い支持力で杭径を最大2サイズダウンでき、重機制約に縛られず密集地でも施工が可能です。
大きな翼の高い引抜き抵抗力により、浅い支持層でも十分な支持力を確保。深くまで杭を打ち込む必要がなく、回転貫入による無排土施工のため、近隣地盤への影響を抑えられます。
| 杭径レンジ | φ89.1〜165.2mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 約217kN(φ165.2mm) |
φ89.1mmからの細径5サイズ展開で、戸建て等の地盤条件に合った杭を選定可能。先端支持・摩擦支持を地盤により使い分けることで、必要以上に杭を深くせず、杭長・コストを抑えます。
セメント不使用の回転貫入方式のため、将来の解体時には逆回転で撤去でき、産廃のない更地に復元可能。
施工も2t建柱車1台で完結し、狭い前面道路の現場にも対応します。
| 杭径レンジ | φ600〜1,200mm |
|---|---|
| 最大支持力 | 17,900kN(φ1,200mm) |
掘削液を使わない中掘り工法で、φ1,400mmの大口径鋼管杭を深度70mまで施工可能。支持層が深く他工法では届かない敷地でも、大型施設の重荷重を支える基礎を構築できます。
杭先端に最大φ2,400mmの根固め球根を築造し、先端支持力17,900kNを確保。高靭性鋼管が大地震時にも粘り強く変形するため、審査の厳しい重要施設のBCP要件にも対応します。